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2014年 05月 16日 ( 1 )


5月にしてはやけに暑い週末だった。病室の窓にはブラインドがかかっているはずなのに、強い日差しが漏れてくる。ほんの30分ほど前、長く闘病生活を送ってきた父が、家族に見守られて旅立った。まだ温もりが残る亡骸を見つめながら、大久保嘉人はベッドの横にある椅子に座ったまま、動けずにいた。

 しくしくと泣きながら、妹の鮎美が荷物を片付けている。父を見舞うために何年も通ったこの部屋を、もう出なければいけなかった。それは父との永遠の別れを意味していた。

 テレビ台の引き出しを整理していた妹が「あっ」と小さくつぶやいた。長い時間、ここで暮らしていたのを物語るかのように、たくさんの物がぎっしりと詰まっている。何冊かの雑誌の下から白い封筒が出てきた。引き出しの2段目の奥の方、まるで隠すかのように、それは置いてあった。中には1枚の診断書。裏に、弱々しい指先で書いたのであろう細い文字が残っていた。

 その紙きれを妹から奪い取ると、大久保は震えた文字を目で追った。

「ガンバレ 大久保嘉人」

 遺書は、そんな言葉から記してあった。

(スポーツグラフィック「ナンバー」WEB版より)

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平成26年5月12日、サッカーワールドカップブラジル大会に臨む日本代表が発表されました。
発表されたメンバーのうち、「ある選手」について遺言が関係しているのをご存じでしたか?

その選手は、川崎フロンターレ所属「大久保嘉人」選手。
発表された選手の中でもとりわけ「サプライズ選出」として話題になった。

そんな大久保選手が日本代表に選出されるには、亡き父親とのストーリーがありました。


『大久保嘉人 遺言ー亡き父との約束』

↓   ↓   ↓   ↓   ↓

http://number.bunshun.jp/articles/-/820724


大久保選手の父親の遺した遺言書は、法律的には遺言書ではなく「遺書」にあたるかもしれません。
遺言書の形式どうのこうのは別として、何か財産について書かれているわけではないから、何かしらの法的な効力があるわけではない。

しかし、私は「結言(ゆいごん)」という商品を作ってから、とりわけ言葉について重きをおくようになりました。

「想いを結ぶ言葉→結言」

単なる財産分けの指示しかない遺言書は「遺言」ではあるけれど「結言」にはならないのではないか。
また、「言葉を遺す」と書く「遺言」に財産分けの指示しかなく、遺言者の「言葉」がなければ遺言にもなりえないのではないか。
言葉の遺っていない「それ」は、単なる「遺産指示書」でしかない。

逆に、財産分けの指示がなくても言葉が遺っていれば「遺言」たりえるし、その遺言は「結言」たりえるのではないか。
私はそう考えています。

だから、大久保選手の父親が記した文書は、「遺言」であり「結言」であると思います。

父の想いと大久保選手が結ばれて日本代表に選ばれたわけですからね。


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ふと空を見上げる。すると、どこからか声が聞こえてくるような気がする。ペンを持つ力すら、残されていなかったはずの父が、ゆっくり、ゆっくりと、時間をかけて書いたであろう息子への遺言。「ガンバレ 大久保嘉人」の後には、ただ家族の名前のみが記されている。そして、こう続く。

「日本代表になれ 空の上から見とうぞ」

(スポーツグラフィック「ナンバー」WEB版より)


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by 073995332 | 2014-05-16 17:16 | つぶやき