【さようなら、そして、ありがとう】
「会社作りたいんだけど、手続きやってくれない?」
仕事があまりなかった10年くらい前、会社設立の手続きをさせていただいたお客さんがいました。
私の両親の友人のお子さんのAさん。
私が中学生のころからの知り合いです。
今だったら、会社設立後も積極的にコンサルしたり、他業種の方をご紹介したりして、会社経営のお役に立てます。
でも、当時はそれだけのスキルもないし、人脈もなかったので設立手続きだけして、「じゃあ後は頑張ってください」というのが私のスタンスでした。
その数年後、ある裁判所で、私がお手伝いをさせてもらった会社名を見かけました。
どうも、売掛金回収の裁判を起こしたらしい。
裁判所の出入り口でAさんとバッタリ。
「どうしたんですか?」
「工事代金を払ってもらえないから、弁護士頼んで裁判してるんだ。そっちこそどうしたの」
「サラ金から払いすぎたお金を取り戻す裁判を頼まれたんで」
「そっか、それなら弁護士じゃなくてそっちに頼めばよかったね」
「弁護士さんなら間違いないですよ」
Aさんは、私といくつも年が違わないのに、いつもニコニコして人柄も良く、人にも仕事にも恵まれた人。
ニコニコもせず、人にも仕事にも恵まれない私にはうらやましい限りでした。
そんなAさんが今朝亡くなった。
3年くらい前に大病がわかり、仕事もやめられて治療に専念されていたのですが、とうとう帰らぬ人に。
闘病中でも、会えば相変わらず愛想のよく挨拶を返してくれていたのですが、私はAさんとどのように接したらいいのか分からない。
完治の見込みがない大病の人にかける言葉を見つけられません。
「身体が動くうちに、いろんな楽しいことをして楽しい思い出を作って笑って死んでいきたい」
Aさんのこの言葉がとても印象に残っています。
『人はいつか死ぬ。そしてその「いつか」は誰も分からない。
それならば、「いつか」がいつ来てもいいように楽しんで人生を送りたい。』
私は2年前にあっさりと死んでいった父親を見送って以来、楽しんで「やりたいこと」をやる人生を選びました。
人が笑おうが蔑もうが、自分の人生をどのように使うかは自分の自由。
人生は楽しむためにある。
決して、愚痴を言ったり、誰かをやっかんだりするために人生はあるわけではない。
自分が死ぬときには、心から「楽しんだ!」と思って死んでいきたいと決めています。
とても悲しいことだけど、お世話になったAさんに、最後のお別れと感謝の気持ちを伝えに行ってきます。
ありがとうございました!