【バーアトハタノンダゾ アリガトヨ】
「掃除をしていたら遺言書が出てきたので見てほしい」
相続手続きのご依頼をいただいている方から、ご連絡をいただきました。
手書きの遺言書(自筆証書遺言といいます)は、形式が整っていないと、無効になってしまう。
そんなことを心配されたようです。
遺言を書かれた方が、亡くなる1ヶ月ほど前に書いたもの。
ご家族は、ご本人に病状を告げてはいなかったのですが、ご自身では病状について気が付いていて、ご家族には内緒で遺言書を残されたようです。
遺言書は便せんではなく、病院から出された「薬の説明書」の裏面に書かれていました。
法律家としては、「誰に何をあげるか」という遺言書の肝にあたる部分に注目すべきです。
ただ、私は少し端っこにカタカナで書かれたわずか「二行」の文章に釘つけになってしまいました。
「バーアトハタノンダゾ アリガトヨ」
(婆、後は頼んだぞ ありがとよ)
婆とは、おそらく奥様のことなのでしょう。
少し乱れた字体でしたが、乱れた字で奥様への最後の想いと感謝の気持ちがつづられていて、心を打たれました。
遺言書作成業務に携わるものとして、依頼者の気持ちをくみ取って「見かけ」美しい文章を作ることはできます。
でも、心を打つ文章を作ることができるかと言われれば自信がありません。
また、私はよほどのことがない限り、自筆証書遺言をお勧めすることはありません。
なぜなら、遺言書が1通しか作成されないので、紛失したり汚損してしまったら本も子もないので。
でも、手書きには手書きの「味」があり、それを上手く活かせれば想いを伝える「結言書」ができあがります。
「結言」という商品を作った際の私のイメージは、法律的な部分は公正証書遺言、想いの部分は自筆(若しくは映像)で作る、でした。
「結言」なら公正証書、自筆証書ともに長所短所があるところをカバーできていい!、と自画自賛していたのですが、今回の「心を打つ2行」のおかげでますます自分の商品に自信が持てるようになりました。
これで、来週に予定している「結言書」作成にも弾みがつきます。